- 2021年8月10日

画像はSelmer super balanced action。1920年代〜1960年代のものは、メーカーに関係なく、音に密度があり、細やかさとやわらかさ を感じます。特にSelmer社のサックスはシルキーさが特徴でしょうか(好みの分かれるところ。現行のモデルで、そのニュアンスが踏襲されているタイプもあります)。
マークⅥアメセルは音量というよりも倍音のおいしい周波数帯域が強調された感じ=コンプがかかった感じ。
コーンに関しては、そこに野性味が加味された鳴り方です。 すべて人の手によって作られた楽器で、しかもオリジナルを発案して試行錯誤の上、世に出したものというのは、そのオリジナルを作り出した人にしか知り得ないノウハウがあるものですね。 20代のころボストンのEmilio LyonsというStanGetzの楽器も診ていたことでも知られるリペア職人の方に楽器を診てもらった時に聞いた話ですが、接続部に使われるゴム質の部品の年代にもこだわっておられ、もちろんその部品だけで音色が変わるということはないが、材質、塗料、、そういう小さな積み上げで総合的に素晴らしい音色を奏でられるのだよ、と。 とはいえ、やはりビンテージの楽器については、その鳴りの素晴らしさは気のせい?だとする実験結果もあります。 2010年にインディアナポリスのホテルの部屋内と、さらに2012年にパリのヴァンセンヌの音楽ホール(2004年に発足)、そしてそのリハーサル室において、 バイオリンの名器Stradivarius ストラディバリウスと現代楽器とのブラインド比較テストが行われ、いずれも現代楽器が勝ちました。 しかし私見ですが この実験には不確定と思われる要素が、、、。 そもそも、、 ●実験会場について、、
ストラディバリウスが作られた18世紀ごろの演奏場所に使われた建材と同条件の建物環境だったのでしょうか。 建物の建材と楽器との共鳴関係は密接ですから会場によって鳴りも違いますね。楽器と周囲の建材との相性があることも奏者の方ならよく経験することと思います。 ●また18世紀ごろの人間の聴力と、便利になった(私も含めての)現代の人間の聴力の、音の判別能力が同条件といえるでしょうか。 ●そのストラディバリウスが楽器としての絶頂期をすでに過ぎていたかもしれない。 ●またオーディオ プロフェッショナルでありケンウッドUSA会長の中野雄さんのコメントの引用として(多くのミュージシャンも同意見)「古楽器は、長く演奏されていなかった場合には音色が悪くなるため、奏者が楽器のポテンシャルを引き出すには多大な時間と労力を要する」 等々、、不確定要素が気になります。もちろんサックスとバイオリンはその歴史も異なりますが。 私はレッスンではなるべく生徒さんと条件を合わせるために現行の楽器を使用します。運指も格段に改良され、部品も潤沢です---最後は個人の好み、、答えがない、、そこがまた面白い世界ですね。
- 2021年3月20日
サックスを購入すると、本体と一緒にマウスピースがついてくることが多いですね。「初心者セット」として楽器店さんのセットアップのものもあります。
音を出しているうちに、CDや生の演奏と比較したり、自分の「こんな音が出したい」という音のイメージができてくるものですが、、、
(アドバイスを受けながら)マウスピースを変えると、音のイメージがいい感じに一歩近づいたように感じることがあります(もちろん幸いにも1本目がお気に入りのこともあります)。
【2本目のマウスピースの候補は何がいいのでしょうか】
アルトサックスの場合、
①メイヤーMeyer、
②セルマー・ソロイストSelmer soloist、
③セルマーs80(またはs90)
という選択肢が多いです。
それ以外にもたくさんありますが、ほとんどが①か②の系統を元に作られたものが多いですのでこれらを知っておくことは後々早道です。。
①はジャズ奏者に多く5MMというサイズの使用者が多いです。サイズは5MMの方が燃費良く飛ばしやすいですが6MMは深いです。
わたしは、Meyerメイヤーを使用するときは、6MS=6Mの*small chamberスモールチェンバーというサイズのものを使っています。
②は、クラシック的な鳴り方ですが、次の③よりもやや外向きなサウンドになります。
③はクラシック/吹奏楽向け。②よりも内向きの音なので密度がより濃いです。あえてs80をジャズで使うのもありです。
*small chamber
chamberとはマウスピースの奥の方の容積のことで、狭いと息が入りやすくブライトになります。現行品のメイヤーの場合、もともとがダークなので、6Mはわたしはsmall chamberがちょうどよく感じます。

- 2021年3月8日
サウンドを聴いた時、この音いい音だなあ、、逆に刺激が足りないなあ、、などと感じるとき、耳は「実は」どこまで本当に聞き取れているのでしょうか。。
まず「音色」のイメージはどのように決まるのでしょう、、
生楽器は、実音(基音)と同時に、倍音(共鳴音)という音が鳴っています。
たとえばサックスでドを吹いたとき、オクターブ上のド、オクターブと5度上のソ、さらに2オクターブ上のド、、、というふうに順番にはド、ド、ソ、ド、ミ、ソ、シ♭…という音が共鳴しています。そしてそれらの音の割合の感じ方が「音色」のイメージとなるわけですね。
本題に戻りますが、そうした音色の成り立ちから考えると、実際のサウンドは固定的ですが聞き手の耳の感度は違うわけで、人によって音色の聞こえ方が違っているのではないでしょうか。
人は、最初に聞く音、、内耳が完成する妊娠5ケ月後の胎児の場合、羊水の中で伝導する約8000ヘルツ以上の高周波音を、骨導音として聞いているそうです。
その後、日常生活でよく使う帯域は自然と訓練されている状態ですが、逆にあまり使わない音域を中心に年齢に応じて衰える場合が多いといいます。
一方で衰えた聴覚の再構築も訓練により可能ということも言われていますから
実際に鳴っている音色を嗅ぎ分けるには、普段からより広い音域に接していることが大切、ともいえるのではないでしょうか。
グランドピアノのラの音440HZのA音からは倍音を含めると15000Hzあたりまで鳴っている(モスキート音が18000HZ)ことを考えると、生の音楽を普段から日常的に聴いている人は自然と可聴帯域を落とさないでいられる、、ということがいえるかもしれません。
参考文
「加齢による聴覚の変化とDPOAE」
「モーツァルト音楽療法で未病克服力をつける」
「Digiland 基礎知識」